2009年 04月 03日
「したたる(滴)」あれこれ (6)
f0073935_7354455.jpg
現代語のタレル(垂)は、タレ・タレ・タレル…… と下一段型に活用しますが、江戸初期のころまでは、タレ・タレ・タルル…… と下二段型に活用しました。



一方この動詞には、これとは別にタラ・タリ・タル…… の四段型の活用も存在していました。

その興亡の歴史を大まかにたどると、およそ次のようになります。

古代には四段型が先行していたのが、やや遅れて下二段型が現れ、両者はしばらく併存したものの、中世以降に及んで後発の下二段型が勢力を増して先住の四段型は消滅し、やがて下二段型は下一段型に活用形式を変えて現代に至った。

昨日見たように、《垂》の意を表す複合名詞の後部要素に「-ダリ」(例:シタダリ)と「-ダレ」(例:スダレ)の両形があるのは、前者が四段型、後者が下二段型動詞の名詞形という違いを示すものです。

ちなみにアマダレ(雨垂)には古くアマダリの形もありましたが、ここにも下二段型と四段型の違いが反映しています。同様にヨダレ(涎)も古くはヨダリの形が行われていました。

つまり、複合名詞における「-ダリ」の形は「-ダレ」よりも古い形で、それが動詞の活用の変化に伴って、「-ダレ」の形に変わるというのが通例でした。

しかるに、アマダリはアマダレに変化したのに、シタダリはシタダレにならずに古い形のまま後世に伝わり、後に第3拍が清音化して現代語に受け継がれた。名詞形シタタリはそういう素性を持ったことばです。

その間の事情は動詞においても同様です。シタダルはわずかにシタタルに転じただけで、シタダレル(あるいはシタタレル)の形に変化することなく、四段型の古形を保ったまま現代語に受け継がれたわけです。 (この項続く)

東京都心の桜は今日が満開だそうですが、当地は1枚目画像に見るように、まだ5~6分の開花状態です。この週末はそこかしこの公園で花見の宴が開かれることでしょう。
f0073935_736028.jpg

  *撮影機材:RICOH GR-DIGITALⅡ 28mm f2.4
[PR]

by YOSHIO_HAYASHI | 2009-04-03 07:36 | 言語・文化雑考


<< 「したたる(滴)」あれこれ (7)      「したたる(滴)」あれこれ (5) >>