2009年 07月 03日
「蟷螂(とうろう)の斧」という諺は、《自らの非力を自覚せずに強敵に向かう》意のたとえとしてよく知られていますね。 江戸のころには、これと同じ意味に用いられる「鰌(どじょう)の地団駄(じだんだ)」という諺がありました。 鈴木棠三・広田英太郎編『故事ことわざ辞典』(東京堂出版)には、明和四年(1767)初演の浄瑠璃「関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)」に見える次のくだりをこの諺の典拠にしています。 小さい形(なり)して角力取(すもうとり)を殺さうとは、鰌〈ドゼウ〉の地蹈鞴〈ヂダンダ〉、 叶はぬこつぢゃ(=できないことだ) まさかドジョウが地団駄を踏むはずはありませんが、ここには奇抜な見立てとしての面白さがあります。そういえば、これと似た表現の諺に「ごまめの歯ぎしり」というのもありましたね。 上記の本文下線部に片仮名で示した読み仮名は、原文に施されているもの。「地蹈鞴」にヂダンダの振り仮名があるのは、このことばが《足で踏んで空気を送るふいご》を指す「地蹈鞴(ぢ・たたら)」から出たと考えられていたことを示しています。現行の「地団駄」は宛字です。 これとは別に、今回のテーマである「鰌」にはドゼウの振り仮名があります。冒頭の画像は、かの永井荷風が贔屓にしていた浅草の泥鰌料理屋の暖簾ですが、「どぜう」の仮名表記は今でもこんな所に残っています。 そんなところから、一般にドジョウは古くから「どぜう」と書かれていたかのように考えられています。 しかしこの仮名表記は、そんなに古くから使用されていたものではありません。 (この項続く) *撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4
by YOSHIO_HAYASHI
| 2009-07-03 06:51
| 言語・文化雑考
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