2009年 07月 04日
「泥鰌(ドジョウ)」あれこれ (3)
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ドジョウはなぜそう呼ばれるようになったのでしょうか。



語源が明らかであれば、それにもとづいて本来の仮名表記を定めることができます。ところがドジョウの語源説はいくつかあるものの、残念ながらこれといった確実なものは見あたりません。そのため、語源にもとづいてその仮名表記を定めるわけにはいかず、古い文献に見える仮名の表記例をもとに仮名遣いを定めるしかありません。

ドジョウは「鯲」「鰌」「泥鰌」「泥鰍」などの漢字で表されますが、これらはいずれもドジョウという語を表すのに中国の漢字表記を借りただけのことで、こうした漢字の読みからドジョウの名が生まれたわけではありません。

ただし、その序文に正徳二年(1712)の年記のある江戸期の百科辞書『和漢三才図会』には、漢語の「泥鰍(デイシウ)」がなまって「ドジャウ」になったとする説があります。しかしこれはとうてい信用できません。

f0073935_1735537.jpgかつてはどこにもいたはずのありふれた魚の名称に、わざわざ難しい漢語を借りたと説くこと自体が眉唾もので、これは俗流語源説にしばしば見られる、漢字表記を根拠とする"語源漢解"の域を出ない珍説にすぎません。

ドジョウの名が文献に現れる比較的早い例は、室町時代の文安二年(1445)から翌年にかけて成立した『壒嚢鈔(あいのうしょう)』という百科辞書の中に見ることができます。ちなみにこの書名の「壒」は《塵》、「嚢」は《袋》の意にあたります。

左に掲げる画像は、臨川書店から刊行された複製版によるもので、巻一の四十九段末尾に列挙されている魚名漢字の一部にあたります。

ここでは、ドジョウを表す「」字に「トチヤウ」の読み仮名が施され、さらにその下に同じ読みで「土長」と記されている点が注意されます。 (この項続く)

*撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-07-04 17:40 | 言語・文化雑考


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