2009年 07月 11日
「泥鰌(ドジョウ)」あれこれ (6)
f0073935_7185424.jpgドジョウの仮名表記が、室町時代のころまでは「ドヂヤウ」であったことを示す例は、これまでに取り上げた文献以外にも見ることができます。ところが江戸時代に入ると、これを「ドジヤウ」あるいは「ドゼウ」と表記した例が登場します。

これは、それまで発音が異なっていたヂャウ・ジャウ・ジョウ(ゼウ)の区別が失われた結果、それらの仮名表記に混乱の生じたことがそもそもの原因です。

左の画像は、すでにこの項の(3)に引用した『和漢三才図会』(1712年序文)巻五十「河湖無鱗魚」の部に収める「泥鰌」の項目の一部です。

見出しの漢字表記には「どじやう」の読み仮名が施され、下の注記にも「俗ニ止之也宇(どじやう)ト云フ」とあって、この魚名の二文字目が、ヂではなくジに相当する「之」の字音仮名で記されています。



これは、次に続く「泥鰌(デイシウ)ノ字ノ音之訛(なまり)也」の注記が示すように、ドジョウの語源を「泥鰌」の字音に求めて、デイ(泥)が「ド」に転じ、シウ(鰌)が「ジヤウ」に転じたものと解したことによるものです。

同様の語源解は、安永六年(1777)から明治二十年(1887)にかけて刊行された、谷川士清(たにがわ・ことすが)の編になる『和訓栞(わくんのしおり)』にも見えます。

こちらも同様に「どじやう」の仮名を見出しに立て、「泥鰌をいふ。音転にや。又泥生の音也ともいへり」として、ドジヤウが「泥鰌」あるいは「泥生」の字音から転じたものとしています。前者の「鰌」の字音「シウ」も、後者の「生」の「シャウ」も、ともに頭音がサ行のものです。

ドジョウの語源を字音に求めることには無理がありますが、そのことはさておき、江戸期に入って仮名表記がドヂヤウからドジヤウに変わっていく背景に、このような語源解の支えがあったことは確かでしょう。 (この項続く)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-07-11 07:19 | 言語・文化雑考


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