2009年 07月 24日
「み」あれこれ (2)
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『守貞謾稿』の江戸のくだりには、続いて、粉唐辛子には「鬼灯花(ほおずき)」の実を刻んだものを混ぜるとあります。これは、江戸では辛味の強いのを好む人が少ないので、辛味を抑えるための方策であったそうな。



ところで、昨日引用した大阪の条に「七味蕃椒(とうがらし)と号して」とあったように、この香辛料、大阪では「七味唐辛子」の名で呼ばれました。一方、この文献には見えませんが、江戸では「七色唐辛子」を通称として用いました。

誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』に収める作品の中に次のような句があります。

 1) 七色をあつめて辛ひ世を渡り    竹笆    [五六篇・文化八年(1811)]
 2) 七色の中ではのきく鷹の爪     ころ/\  [七〇篇・文政元年(1818)]

1)は『守貞謾稿』に出てきたような粉唐辛子売りの暮らしぶりを詠んだもの。七色唐辛子の辛さを、《せちがらい世》の意を表す「辛い世」に利かせています。

2)の「はのきく」とは「羽の利く」ということで、《勢力がある・羽振りがよい》の意を表す慣用表現。七味の中では、唐辛子の変種「鷹の爪」が、その辛さで幅を利かせているというわけです。

両句ともに「七色唐辛子」の略称にあたる「七色」を用いている点が注意されます。

文政三年(1820)の初編に始まり、嘉永二年(1849)に至るまで続編が刊行された江戸の滑稽本『八笑人(はっしょうじん)』にも次のような台詞が見えます。

あつらへの七色唐辛子を売(る)様にあんまり交(まぜ)つけへされると怯(ひる)むぜ (第五篇・上)

現代でもそのようにして売られることもありますが、当時の七色唐辛子は、買い手の「あつらへ(注文)」を聞いて混ぜ合わせた品が売られていたことを示しています。

これらの例に見るように、この品は、江戸では「七色唐辛子」、大阪では「七味唐辛子」を通称としていました。 (この項続く)

*撮影機材:RICOH GR-DIGITALⅡ 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-07-24 12:32 | 言語・文化雑考


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