2009年 10月 02日
「しさる(退)」あれこれ (2)
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昨日紹介した中世の謎、

 鹿しさって踊って 狸頭隠いてもんどりうつ      かゞぎぬ(加賀絹)

この謎は次のような順序で解くことができます。



1)鹿しさって  : 「しか/し/さって」と分析し、「しか」の「し」が去って「か」が残る。
2)踊って    : その「か」が踊って「かゝ」になる。
3)狸頭隠いて : 「たぬき」の「頭」の字を隠して「ぬき」になる。
4)もんどりうつ: その「ぬき」が「もんどり」を打って「きぬ」になる。


こうして得られた2)の「かゝ」と4)の「きぬ」を合わせれば、答の「かゝきぬ」になります。

なお、2)は繰り返し記号「ゝ」を「踊り字」と呼ぶところから、「踊る」に《前と同じ字を繰り返す》の意味を与えたもの、4)は「もんどりうつ」が《とんぼ返りをする》の意を表すところから、これに《上下をひっくり返す》の意味を持たせたものです。

ちなみに、中世の謎では仮名の清濁の区別は問題にならず、得られた「かゝきぬ」を「かゞぎぬ」と読むのはいっこうに差し支えありません。これは、仮名というものが本来清濁の別のない文字であったところから、こういうことが許されると考えることができます。

さてここからが本題。

この謎では、《退く》の意を表す「しさる」に「"し"去る」《「し」の字が消える》という別の意味を与えているところが一つのポイントになります。ところでこの動詞には、後に触れるように、別にシザルという語形もあったので、ここの「しさって」は、シサッテ・シザッテのどちらに読まれたのかという問題もからんできます。

この点については、謎の裏の意味が「シ・サル」の読みに支えられているところから、謎の作者の念頭にあったのは、シザルではなくてシサルの方であったと見るのがよさそうです。 (この項続く)

今日は朝から雨。やむなくスナップ用カメラを片手に傘をさして散歩に出ました。秋の天気は長続きしませんね。
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*撮影機材:RICOH GR-DIGITALⅡ 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-10-02 06:53 | 言語・文化雑考


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