2009年 10月 06日
「しさる(退)」あれこれ (6)
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「しさる」とは別に、その語頭母音交替形の「すさる」も古くから用いられてきました。



問答体の形式をとる鎌倉時代の語源辞書『名語記(みょうごき)』(1275)の巻八には、次の問と答が見えます。

 問 スサリ スサルナトノ詞如何
 答 シモサカレリノ反 ソサル也


ここでは次のような語源解釈が行われています。

スサリ・スサルの語源を尋ねる問に対して、まずその語釈にあたる「シモ(下)サカレリ(さがれり)」《下にさがっている》を呈示します。次に、漢字音の反切の原理(この項(4)参照)をこれに適用して、シモのシの子音とモの母音を組み合わせて、同じくサカから、レリからを導き出します。そして、ここから得られたソサリからスサリに転じたと解するわけです。

この語源解はなにやらもっともらしく見えますが、ほとんど語呂合わせの域を出ない、こじつけ解釈に過ぎません。しかし、ここには言語遊戯に通じる面白さがあり、またスサリ・スサルの語形が示されている点には、言語資料としての価値も認められます。

後にも触れますが、現代の共通語の「後ずさり」に含まれるスサリは、すでにこのころにまでさかのぼってその存在が確認されることになります。 (この項続く)

*撮影機材:PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-10-06 16:22 | 言語・文化雑考


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