2009年 10月 08日
「しさる(退)」あれこれ (7)
f0073935_87352.jpg「しさる」「すさる」は、本来《後にさがる》の語義を備えていますが、この項の(5)に引用した『捷解新語』に「あとゑしさる」とあったように、《後》をさらに明確にする言い方が生まれ、近世以降にはそれが結び付いた「あとしさり」「あとすさり」の形が一般に用いられるようになります。



一々の使用例は省きますが、これらの語形には、さきに見た「しさる」に「しざる」の濁音形があったと同様に、「あとしさり」には「あとしざり」、「あとすさり」には「あとすざり」がそれぞれ併用されていたことが『日本国語大辞典』(第二版)の各項の引用例によって知られます。

これに加えて「あとしり」「あとすり」の両濁音形には、それぞれの濁音拍が一つ前に移行した「あとさり」「あとさり」の形も新たに生まれ、この系列の語は乱立の様相を呈するに至ります。

左の画像は『日本辞書 言海』(1891初版)のコピーです。ここでは「あとじさり」が主項目に立てられ、「あとずさり」は参照見出しとして扱われています。それとともに、明治20年代にはすでに濁音拍がともに第3拍に移っていたことが知られます。さらに前者の語釈には「シザル」が用いられており、当時はまだこの形が生きていたことを示しています。 (この項続く)

台風のために今朝の散歩は中止。この時点では雨よりも風が強くなってきました。
朝6時の段階で、大学のホームページには本日休講措置を取ることになったという告知が出されました。
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by YOSHIO_HAYASHI | 2009-10-08 08:10 | 言語・文化雑考


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