2010年 02月 19日
「つぶやく」ということば(2)
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「つぶやく」における接尾語「やく」は、「かがやく」にも含まれています。

この動詞は、近世前期のころまではその第二拍が清音で「かかやく」の形を用いていました。次に掲げる『日葡辞書』(1603年刊)の見出し語カカヤクとその複合語群はこのことを示すものです(画像は『邦訳日葡辞書』<岩波書店>による)。
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この「かかやく」の「かか」もまた、「ささやく」の「ささ」と同様に、同音反復形を用いたオノマトペと見ることができます。

ところでこの「かか」という構成要素は、間に促音をはさんだ「かっか(と)」の形で現代語に存在します。

現代では「火がかっかと燃える」「体がかっかとする」などのように、「と」を伴った形の副詞として、《勢いよく燃える様子》や《熱を持ってほてる様子》などを表すのに用います。

しかしこの語は、中世のころにはこれとはいささか異なる意味に用いられました。1586年ごろから1599年の間に成立した禅門抄物の『巨海代抄(こかいだいしょう)』には次の例があります。

 海底の珊瑚枝まで日がかっかと照らして

ここに用いられた「かっかと」は、《明るく輝く様子》の意を表しています。現代語ならば「日がかっと照らして」の形を用いるところですが、この語の原義はこのようなものであったと考えることができます。

つまり、「かがやく」の古形「かかやく」の前部要素「かか」は、照り輝くさまを表すオノマトペであり、現代語に伝わる「かっか(と)」は、古代人が光り輝く状態を「か」の音によって象徴的に表した擬態語を今に伝えるものであったというわけです。 (この項続く)
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*撮影機材:PENTAX K-7 +SIGMA17-70mm f2.8-4.5 DC MACRO
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by YOSHIO_HAYASHI | 2010-02-19 07:06 | 言語・文化雑考


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