2010年 02月 23日
「つぶやく」ということば(4)
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文学史で仮名草子と呼ばれるジャンルに属する『竹齋』という作品の天和三年(1683)版に次のような例があります。

 ひとり かべにむかひ 九年めんぺき(面壁)の思ひをなし ぶつぶつとひとりごとをいひける内に
 程なく夜も明にけり
 (岩波文庫本による)

ここには現代語と同じ「ぶつぶつと」の形が用いられています。

この文献は、前回引用した『玉塵』よりもおよそ60年ほど後に成立したものですが、両者の使用例から、このオノマトペには、ほぼ同じ時代に「つぶつぶ」とは別に「ぶつぶつ」の形も存在していたことが知られます。

さらにまたこの両形併存の状況は、このオノマトペから派生した動詞についてもうかがい見ることができます。前回引用した『日葡辞書』には次の二つの記事があります(『邦訳日葡辞書』<岩波書店>による)。
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これによれば、当時は「つぶやく」と並んで「ぶつやく」の形も存在していたこと、また後者の語義解説に見るように、「ぶつやく」よりも「つぶやく」の方を正統な形と見なしていたことが知られます。

結局、動詞では「つぶやく」の方が後世に受け継がれたのに対して、副詞ではその同類にあたる「つぶつぶ」ではなしに、もう一方の「ぶつぶつ」が生きながらえたことにより、現代語における動詞と副詞との間に語形上の不整合をもたらす結果を招いたわけです。 (この項終り)
*撮影機材:R-D1+SUPER ROKKOR45mm f2.8
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by YOSHIO_HAYASHI | 2010-02-23 06:03 | 言語・文化雑考


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