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2010年 03月 29日
シタダミからフゲシへ -ツィッターの話題から- (9)
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二十巻本『和名類聚抄』の古写本には、前回に引用した永禄九年(1566)書写「永禄本」(名古屋市博物館所蔵)とは別に、これとほぼ同じ時期にあたる天正三年(1575)の年記奥書を持つ「天正本」もあります。左に掲げるのは、その「能登国郡名」の部分の画像です(馬淵和夫『古写本和名類聚抄』<勉誠出版>による)。

f0073935_579100.jpgここに記された郡名「鳳至」にも、すでに引用した元和古活字本(以下「元和本」と略称)と同様に万葉仮名による付訓がなされています。ただし元和本には「不布志」とあったのに対して、天正本は「不希志」とあり二文字目にわずかな異なりが認められます。しかしここには、元和本の本文に関する重要な問題が潜んでいます。

「天正本」の付訓「不希志」の二文字目「希」は、「希有(けう)」などの熟語の読みに用いられる呉音「」を表したと見るべきもの。つまりこの表記は、前回に引用した「永禄本」の片仮名による「フケシ」の語形に一致します。またそこにも記したように、これは現行地名の「フゲシ」に相当するものと考えるのが妥当です。

これらのことから、「元和本」に見える「不布志(ふふし)」の読みは「不希志(ふけし)」を誤ったもので、それは、すでにお気づきのように、「希」と「布」の字体の類似によって引き起こされた結果であることも容易に推察されます。それは、左の画像にも見るように、「希」字の構成要素「爻」の上部の「メ」が小さく書かれていた点に誤写をもたらす原因があったものと思われます。 (この項続く)

1枚目の画像は数日前に拙宅の台所の窓から望遠レンズで撮ったもの。雨に濡れて隣家の庭に咲くサンシュユ(山茱萸)の花です。

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*撮影機材:R-D1+Travenar 90mm f2.8 (1枚目)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2010-03-29 05:26 | 言語・文化雑考


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