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2006年 06月 09日
すあま(4)
すあま(4)_f0073935_15124630.jpg「州浜」がスハマからスアマになったのは、前回の記事に対する junior クンのコメントにも示されていたように、suFama > suwama > suama という音変化の結果によるものと考えることができます。

suFama が suwama になったのは、いわゆる「ハ行転呼」によるものです。これは、平安時代、西暦1000年のころに、それまではハ行音に発音されていた語中尾の音節がワ行音として発音されるようになった音変化で、これはスハマに限らず、語中尾にハ行の音節を有する他の語にも起きた現象です。

さらに suwama から suama に転じたのは、suwama に含まれる母音 u と、これに続く半母音の w が近似しているために、w が直前の母音に同化・併合されたことによると解釈することができます。



ただし、この変化は統一的に完結したわけではなく、一方には依然としてスハマやスワマの形を留めている江戸期の例も散見されます。『日国』の記事を参考にしてそのような例を拾い出してみましょう(カッコ内の丸囲い数字は「すあま(2)」の項に示した「州浜」の語義に対応する)。

・州浜 スハマ(①) 和俗所用 (書言字考節用集<1717>・二・乾坤門下)
・州浜 スハマ(②) 今云島台 ( 同・七・器財門)
・州浜 スハマ(⑤) 又云豆飴 ( 同・六・服食門)
・なつはすずしき有様、すわま(③)にいけをほらせ、やり水、たて水、なかれ水 (浄瑠璃・田村<1650>四)

『書言字考節用集』に見える「スハマ」の振り仮名は、実際には「スワマ」と読まれた可能性もありますが、ここに見るように、すべてが足並みを揃えるようにスアマに転じたわけではないことが知られます。(この項続く)


関東地方は本日から梅雨入り。しばらくは雨に妨げられて思わしい散歩写真が撮れないので、これまでのストックの中から随意にアップすることにします。
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*撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm(SC) f1.4

by YOSHIO_HAYASHI | 2006-06-09 16:40 | 言語・文化雑考


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