2006年 07月 26日
貞門の俳人安原貞室が編んだ『かたこと』(1650年刊)は、江戸初期の京都の言葉を中心に、ことばのなまりについて論じた書物ですが、その中に「やはり」を取り上げた次の一項があります(近代語研究会編『近代語研究』第三集による)。 其儘(そのまゝ)そこにあれと云べきを 、やつぱり、やはり、やつぱしなどいふは如何(いかが)。此うちにも、やはりといふこと葉は、若(もし)矢張(やはり)の字歟(か)。弓に矢を引くはへて、むかふ敵(かたき)を射(い)すまさんと心にくすみて待(まち)まふけたるやうのこと歟。 これによれば、当時の日常語でも、すでに「やはり」「やっぱり」のほかに「やっぱし」を用いていたことが知られます。 なおここでは、「やはり」の語義について、《弓に矢を引きつがえて向かってくる敵を残らず射殺そうとじっと待ち構えている様子》を表すものとする語源解も示されています。 これは「矢張」の漢字表記にもとづく民俗語源解というべき解釈ですが、それはともかく、「やはり」に《じっと待ち構えている》の意が備わっているとしている点には、この語の本義が正しく把握されています。 なお、後世には一般に用いられるようになる「矢張」の漢字表記が、ここでは「もし『矢張』の字か」という疑いを残す表現で、一案として示されています。当時はまだこの表記が通用のものではなかったと見るべきでしょう。 *撮影機材:R-D1+COLOR-HELIAR75mm(MC) f2.5
by YOSHIO_HAYASHI
| 2006-07-26 11:59
| 言語・文化雑考
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