2006年 10月 18日
昨夜のできごと #4
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軽い気持ちで始めた記事が連載4回に及んでしまいました。このあたりで打ち止めにしないと、最新の記事がどんどん滞ってしまいます。



青年は日本文化を学ぶために現在ICUに留学中とのこと。近世に興味があるそうで、話の中に「俳諧」というキーワードが登場してきたりします。これは面白いことになりそうだ、さっそく連句の土俵に引き入れてみよう。そう考えて、誘いの水を向けました。

 「連句という遊びをしたことありますか?」
 「いえ、ありません」
 「じゃあ、今ここでそれを試みてみましょう」
 「私がこれから発句を詠みます。連句にはいろいろな細かい規則があるけれど、それにはとらわれないことにして、あなたはそれに脇を付けてみてください」

たちまち速成の連句の座が開かれます。しばらく案じた後、次の句が浮かんできました。

 この宵やかぼすの香るカウンター  宗海

店主にもらった紙片にこれを書いてマットに渡し、この句に七・七の短句を付けるよう促します。彼はしばし沈思黙考の体でしたが、やがて次の句を記した紙片が返ってきました。

  自分のなやみ外においたか    マット

をを~、見事。立派に短句の体を成しているではありませんか。
「ベリー ナイス。とても初めての連句経験者のものとは思われません」
そう言って彼の大きな分厚い手を握りました。

これを発句に付け合わせてみると、両者がハーモニーを奏でるように一つの世界を造りだしていることがわかりますね。バーのカウンターで偶然隣り合わせた者同志が、日常の些事を忘れて異次元のひとときを過ごす楽しさが伝わってきますよね。

連句はもともと、このような人と人とをつなぐコミュニケーション性と、遊戯的な性格を兼ね備えた文芸だったのです。お高く止まったよそいきの顔をしたものではさらさらありません。

それと、日本語を学ぶ外国の人たちにこうした連句体験を持ってもらうのも、日本語の韻律というものを知ってもらう上で大事なことだ。そういう実感を得た秋の夜のできごとでした。

やれやれ、これで千夜も続けることなく、めでたく話を終えることができました。おしまい。
(下の写真の人物はこのバーの店主で、昨夜撮ったものです。あ、また行ったことがばれてしまった ^^;)
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  *撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4 (1枚目)
         R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (SC) (2枚目)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2006-10-18 11:39 | 身辺雑記


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