2006年 12月 20日
大阪洒落言葉枝道#1 -カエル・ガエルをカンガエル-
f0073935_6304432.jpg大阪洒落言葉「冬の蛙で、かんがえる」の大通りには、予想もしなかった枝道がありました。

「寒蛙」と類音の季語「寒返」が動詞の時にはカンカエル、名詞ならばカンガエリという具合に、第3音節に清濁の対立が生まれるのはなぜか、という問題(12月17日記事参照)に、寿クンと晶さんからコメントがありました。寿クンのは非公開方式で届いたものです。

寿クンのコメント要所を引用します。

 > 動詞の場合は『「寒」が「返る」』という具合に、二語による複合語だという意識があるために、二語の間に切れ目があって清音。
 > 名詞化すると、その意識が無くなり「かんがえり」で一語という認識になるために、「かん」と「かえり」が繋って後ろの語の頭が濁音になる(連濁)。



晶さんのお答えもこれと同趣旨のものです。

 > 返りが名詞に付けば「がえり」
 > 動詞に付けば「かえり」
 > こういうルールがあるように思います
  (中略)
 > 動詞に動詞が付いて複合動詞になったものはその名詞的用法っていうか名詞形があります。
 > 名詞に動詞が付いて「がえり」と読む名詞には動詞形はありません

  (中略)
 > このルールでいくと寒(名詞)-がえり は正しいですよね
 > しかし、これには「寒返る」という動詞はあるのでしょうか
 > 上のルールから言うとないはずです
 > 「宙返る」って言葉はないですから
 > したがって、この「寒返る」は「寒が返る」の助詞の省略ではないでしょうか

どちらも合格答案です。お見事(拍手)

上記をまとめるとこうなります。

1)カンガエリは、寒(名詞)+返り(名詞)の結びついた形であり、そういう
  複合のしかたでは、後部要素の語頭が濁音化する(これを連濁という)。
2)カンカエルは、「寒(が)返る」という主述の関係を構成する形であり、二語の
  複合したものではないので、連濁は起きない。

「寒返」という個別問題の解としてはこれで十分です。

ところで、晶さんのコメントには、この個別を突き抜けて普遍の高みを目指す姿勢が見られます。
語学的追跡はかくありたきもの。いたく感服いたしました。

上記の太字引用部分がきわめて重要です。これを吟味いたしましょう。

 > 動詞に動詞が付いて複合動詞になったものはその名詞的用法っていうか
 > 名詞形があります。

こういう場合には濁音形を取らない、その実例として、次を挙げておられます。

 > そり-かえり 反り返り 反りかえる
 > たち-かえり 立ち返り 立ちかえる
 > み-かえり  見返り  見かえる
 > はね-かえり 跳ね返り 跳ねかえる

ここには非の打ち所がありません。まったくそのとおりです。

 > 名詞に動詞が付いて「がえり」と読む名詞には動詞形はありません
  (中略)
 > こむら-がえり こむら返り
 > うしろ-がえり 後ろ返り
 > せんぞ-がえり 先祖返り
 > ちゅう-がえり 宙返り 

こちらも良さそうですが、なおダメ押しとして、次のような例も視野に入れておかなければなりません。
以下の3点についてはどのように考えればよいでしょうか。
今後の引用に備えて、通し番号を付けて示すことにしましょう。

甲) 「寝返」にはネガエリの他にネガエルの動詞形もあります。これをどう考えるか。
乙) ハヤガエリ(早帰)のハヤは形容詞ハヤイの語幹ですが、これをどういうものとして扱えばよいか。
丙) 《甦生》の意を表す語には、ヨミガエリ・ヨミガエルの名詞・動詞両形があります。これは晶さんのいう"「がえり」と読む動詞形"です。これをどのように扱えばよいのか。
===【追記】006.12.20====
ついでにもう一つ。
 > 「宙返る」って言葉はないですから
これはどうでしょうかね。ブログ探せば簡単に見つかりますよ。
たとえば、ホラ。
> だってね、もう一人がやってきてヒョイっとまたがったと思ったら、その板の真ん中で
> 飛び跳ね、宙返っちゃうんだもの。 最後は子供まで抱えて宙返っちゃった。
 (ブログ"伊藤佳奈子 -to your Heart-"「エンタな一日」より)
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さぁ、枝道がどんどん現れてきますぞ。
さらに皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
袋小路に迷い込まぬよう、ご注意あれ(^^;
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by YOSHIO_HAYASHI | 2006-12-20 06:33 | 言語・文化雑考


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