2007年 01月 29日
「初心者の人」という言い方(続) 【加筆アリ】
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まず「初心」という語について、足もとを固めておきましょう。



『日国』「初心」の項には、次のような語義解説があります。

 (1) 初めに思いたった心。最初の決心。初一念。素志。初志。
 (2) (「しょほっしん(初発心)」の略)初めて悟りを求める心を起こすこと。仏道に
   はいったばかりのこと。また、その人。
 (3) 学問・芸能の道にはいったばかりであること。また、その人。学び初め。
   ういまなび。初学。
 (4) (形動)世なれていないこと。また、そのさま。未熟。うぶ。やぼ。

(1)は原義にあたる漢語の用法。(2)は仏典に典拠を持つもので、ここから意味が転じて(3)の用法が生まれたものと思われます。(4)はこの語が形容動詞としても用いられたことを示すものですが、現代日本語にはこの用法はありませんね。

上記の「初心」(2)(3)には、「者」や「人」を添えなくても、それだけで《初心者》の意を表す用法のあった点が注意されます。

ところで『徒然草』第92段には、よく知られた次のくだりがあります。

 初心の人、二つの矢を持つ事なかれ

弓を習う人が二本の矢を持って的に向かった時に、乙矢(おとや《後の矢》)に期待する気持ちが生まれるので、弓の師がそれをたしなめてこう言ったという話ですね。

本来「初心」だけでもよいところを「初心の人」としているのは、作者の生きていた鎌倉末期から南北朝期のころには、「初心」だけでは《初心者》の意を表し難くなっていたことを示す例とみるべきでしょう。
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*撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (SC)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-01-29 08:07 | 言語・文化雑考


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