2007年 05月 10日
『捷解新語』-「朝鮮通信使」通訳が学んだ日本語教科書- (その2)
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現代の朝鮮通信使たちのウェブサイトの「日程」によれば、40日目にあたる本日は、藤枝-清水間33㎞を踏破する予定で、東京まであと6日というところにさしかかっています。もうすぐゴールインですね。



5月6日の記事に引用した、『捷解新語』(原刊本)第三巻に載る日本語文を再録します。

 な(ん)としてやら、にほんものわ、ゆくしきのやうなものお、くいまるせんほどに、 
 そう御ざるやら、そうべ(ッ)つ、ひさしうたつことがようなりまるせいんで、申(し)
 まるしたに、じゆうにおぼしめすかと、めいわくしま【るする】。


これは、貿易のために朝鮮国に渡海した日本国の役人たちの労をねぎらうために開かれた酒宴の席での会話で、話し手は日本側の役人。これを現代日本語に言い換えると次のようになります。

 どうしたことか、日本人は肉類を食べませんので、そうなるのでしょうか、元来、
 長く立っていることができなくて、(座ったまま酒盛りをしたいと)申し上げたの
 ですが、(私のことを礼儀知らずの)身勝手な奴だとお思いなのではないかと、
 困惑しております。


現在では、立食形式の宴会はさほど珍しくありませんが、江戸期の日本ではこのような形で宴を開くことはありませんでした。

しかし当時の朝鮮国では、むしろそれが礼式にかなったやり方で、それを「立ち酒盛」と称していたことが、この文章の後のくだりから知られます。

この役人は、渡海中に胸と腹の痛む病気にかかり、朝鮮到着後に珍薬をもらって、だいぶよくなったということも述べているので、病み上がりだったことが分かりますが、それにしても、日本人は肉食をしないので長く立っていられない、と言っているところは、興味をそそるものがあります。

ここにゆくしきとあるのは、「肉食」にあたる漢語ですが、日本の字音読みではユクシキとは読まれないはずです。

これに対して、現代コリア語では「肉食」は육식(yuk-sik)で、これを仮名で表せばユクシク、あるいはユクシキになりますから、上の箇所に出るゆくしきということばは、当時の朝鮮語にあたると考えることができます。(この項続く)
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-05-10 07:53 | 言語・文化雑考


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