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2007年 05月 12日
『捷解新語』-「朝鮮通信使」通訳が学んだ日本語教科書- (その3)
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21世紀の朝鮮通信使たちがソウルを出発してから42日目にあたる本日の日程は、吉原-三島間23㎞を踏破することになっています。先日の大雨と大風に苦労された模様がウェブサイトに報告されています。



5月10日の記事に引用した『捷解新語』原刊本第三巻には、《肉食》を指す「ゆくしき」という言葉が用いられていました。このくだりは、それからおよそ70年後に出版された改訂版(第一次改修本)では次のように表現が改められています(原本フランス・パリ東洋語学学校図書館所蔵・韓国太學社複製本による)。 

 なにとしてやら、にくしきのやうなものお、くいませんほどに、そう御ざるやら、
 もと、ひさしうたつておることが、よう御ざらいで、申(し)ましたに、じゆうにおぼし
 めすかと、きのどくに御ざりま(ッ)する。


改訂版では、初版にあった朝鮮語らしい「ゆくしき」が、日本漢語の「にくしき」の語形に改められている点が注意されます。

なお、日本語の読みを示すために本文右側に施されたハングルによれば、この語はニュクシキと読まれたらしいことが分かります。

ちなみに、1603年にキリシタン宣教師たちが長崎で出版した、日本語・ポルトガル語の対訳辞書『日葡辞書』には、この漢語が Nicujiqi.(ニクジキ)の形で採録されています。なぜこのような違いがあるのか、定かではありませんが、ニュクという読み方は、「肉」の朝鮮字音ユクと、日本字音ニクの混淆によって生じたものではないかと思われます。

ところで、この改訂本文でもう一つ注意されるのは、初版の「めいわくしまるする」の箇所が「きのどくに御ざりま(ッ)する」と改められている点です。(この項続く)

昨日は城尾さんの姿を見かけませんでした。代わりに、これもノラと思われる新顔の若い茶トラが登場しました。こちらももちろん煮干派です。
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)

by YOSHIO_HAYASHI | 2007-05-12 05:03 | 言語・文化雑考


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