2007年 06月 02日
マツボックリ(1)
f0073935_7332948.jpg
 まつぼっくりが あったとさ
 高いおやまに あったとさ
 ころころころころ あったとさ
 おさるがひろって たべたとさ




広田孝夫作詞・小林つや江作曲による童謡「まつぼっくり」の歌詞です。「おさるがひろってたべた」のは球果ではなく、その中にある松の種子(松の実)で、リスもまたこれを好んで食べるそうです。

この童謡に歌われているマツボックリは、マツとボックリの二語が結びついたものです。マツは《松》だから問題はありませんが、後部要素のボックリとはいったいどういう意味の言葉でしょうか。

いきなり余談に及びますが、この童謡の歌詞を「コロボックルがあったとさ」と覚えていたという方の話を、ある掲示板で見かけました(笑)。

この歌詞の中に「ころころ」という擬態語が使われているので、ここから類推がはたらいて、マツボックリがコロボックルに変形したのでしょう。

「コロボックル」というのは、アイヌの小人伝説に出てくる《蕗の葉の下の人》の意を表す語で、確かに語形がよく似ていますが、これとはまったく無関係です。

さて、このボックリという語は、先日このブログにその名前が出てきましたが、オオイヌノフグリにも使われている、《陰嚢》を意味する古語フグリから変化したものと考えることができます。

オオイヌノフグリの場合も同じことでしたが、こちらも、松の球果の形がそのものの姿に似ているところから、初めはマツフグリと呼ばれていました。

そのマツフグリがマツボックリに変化した過程を、私は次のように想定します。

 マツフグリ > マツブクリ > マツブックリ > マツボックリ

原形のマツフグリがマツブクリに転じたのは、ハラツヅミがハラヅツミに変化したのと同じ現象で、フグリの濁音節が、マツと結びつく際の連濁現象によって、その位置を第二音節から一拍前の第一音節に移し、フグリをブクリの形に変えたことによると考えられます。

さらにそのことが語源忘却に拍車をかけて、次の段階の語形変化を引き起こしたものと思われます。 
(この項続く)

本日の画像は、昨日歩いてきた淺草界隈のものです。
f0073935_7335226.jpg

f0073935_7345325.jpg

f0073935_73572.jpg
f0073935_7352084.jpg

*撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
[PR]

by YOSHIO_HAYASHI | 2007-06-02 07:36 | 言語・文化雑考


<< マツボックリ(2)      イロハの逆さ読み(3) >>