2007年 06月 02日
高いおやまに あったとさ ころころころころ あったとさ おさるがひろって たべたとさ 広田孝夫作詞・小林つや江作曲による童謡「まつぼっくり」の歌詞です。「おさるがひろってたべた」のは球果ではなく、その中にある松の種子(松の実)で、リスもまたこれを好んで食べるそうです。 この童謡に歌われているマツボックリは、マツとボックリの二語が結びついたものです。マツは《松》だから問題はありませんが、後部要素のボックリとはいったいどういう意味の言葉でしょうか。 いきなり余談に及びますが、この童謡の歌詞を「コロボックルがあったとさ」と覚えていたという方の話を、ある掲示板で見かけました(笑)。 この歌詞の中に「ころころ」という擬態語が使われているので、ここから類推がはたらいて、マツボックリがコロボックルに変形したのでしょう。 「コロボックル」というのは、アイヌの小人伝説に出てくる《蕗の葉の下の人》の意を表す語で、確かに語形がよく似ていますが、これとはまったく無関係です。 さて、このボックリという語は、先日このブログにその名前が出てきましたが、オオイヌノフグリにも使われている、《陰嚢》を意味する古語フグリから変化したものと考えることができます。 オオイヌノフグリの場合も同じことでしたが、こちらも、松の球果の形がそのものの姿に似ているところから、初めはマツフグリと呼ばれていました。 そのマツフグリがマツボックリに変化した過程を、私は次のように想定します。 マツフグリ > マツブクリ > マツブックリ > マツボックリ 原形のマツフグリがマツブクリに転じたのは、ハラツヅミがハラヅツミに変化したのと同じ現象で、フグリの濁音節が、マツと結びつく際の連濁現象によって、その位置を第二音節から一拍前の第一音節に移し、フグリをブクリの形に変えたことによると考えられます。 さらにそのことが語源忘却に拍車をかけて、次の段階の語形変化を引き起こしたものと思われます。 (この項続く) 本日の画像は、昨日歩いてきた淺草界隈のものです。 *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
by YOSHIO_HAYASHI
| 2007-06-02 07:36
| 言語・文化雑考
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