2007年 06月 08日
マツボックリ(3) 【加筆アリ】
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数日の間中断していた標題の話題に戻ります。



『時代別国語大辞典 室町時代編』「まつふぐり」の項には、次の用例が引用されています。

 松笠二ツ置カヌモノ也。松フクリト申儀也。三ツ五ツ置候也。(小笠原花伝書)

上の記事の典拠となった、『小笠原花伝書』の成立時期とその内容は不明ですが、ここに引かれた一節とその書名から、華道秘伝書のようなものであろうことは容易に推測されます。

ここでは、飾り物としてマツカサを用いる時には、二つを置くものではなく、三つか五つの数にすべきだ、ということが述べられています。なぜそうなのかというと、マツカサはマツフグリとも呼ばれるものだから、それを二つを置くと、その名の元になったものの形を連想させてよろしくない、というのがその理由であるように読めます。

なお、この文献にはマツカサとマツフグリの二つの名が出てきますが、マツカサの方が新しい呼び名であろうと思われます。上記の箇所で、マツカサは別にマツフグリとも呼ばれる、ということをことさら指摘しているのは、この文献が成立した当時は、後者の呼び名がすでにいささか耳遠いものになっていたからでしょう。

ちなみに、キリシタン文献の『日葡辞書』(1603)にも、Matcucasa(マツカサ)の見出しはありますが、マツフグリ系の語形は載録されていません。このこともまた、当時すでにマツフグリが通用語としての役割を終えていたことを物語るものと思われます。

しかし、現代にもなおマツボックリの形が残存していることに鑑みれば、いったんは消滅の危機に瀕したマツフグリが、やまとことばの地中深くでひそかにマツボックリに変身し、まんまと現代まで生き延びてきたことが知られます。

今朝はまた例のチビトラが姿を見せてくれました。
大人たちにまじって煮干しを囓っている可憐な姿を見ると、思わず頬がゆるんできます。
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-06-08 08:15 | 言語・文化雑考


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