2007年 07月 08日
ズワイガニあれこれ(1)
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 ずわい蟹茹でる灯靄(ひもや)の人だかり   坂本其水

上の俳句の季語は「ずわい蟹」。これは「たらば蟹」などと同じく冬の季語ですね。



これに対して、海辺や清流に棲む小さな「蟹」は夏の季語。同じカニ類でも季に違いがあります。

ところで、このような季語を載せる歳時記には、ふつう、例えば冬の季語「塩鰹」について言えば、「しがつ」と「しがつ」のように、見出しの左右に振り仮名を施して、現代仮名遣い歴史的仮名遣いの違いが示されています。

ところが、このように新旧両仮名遣いを併記する歳時記でも、このズワイガニの見出しは「ずわい蟹」とあるだけで、仮名遣いを示す振り仮名は施されていません。

なぜこのようなことになるかというと、それはズワイガニのズワイの仮名遣いがよくわからないからなのです。

歴史的仮名遣いというのは、例えば「い」「ゐ」とか「え」「ゑ」のように、後に同音になってしまった仮名について、まだその混乱が生じていない時期の文献の中から証例を探して、その使い分けの規準を定めたものです。ところが、そのような使い分けがきちんと守られている古い文献の中に見あたらない語については、その仮名遣いを定めることはできません。

場合によっては、そのような仮名の証例が得られなくとも、語源が確かなものであれば、それに基づいて仮名遣いを定めることは可能です。

しかし中には、上記のどちらの方法にも頼ることのできない語もあります。

ズワイガニもそういう語の一つです。

ズワイは、「ず」なのか「づ」なのか、は「わ」とすべきか、それとも「は」がよいのか、さらには、「い」「ゐ」「ひ」のどれが適切なのか、それを決める確証はまだ見つかっていません(なお、ズワイガニの語源については後に触れます)。

俳句や連句は歴史的仮名遣いで表記すべきだと主張される方々にとって、実はこういう語が一番の困りものです。

そういう語は漢字で書けばよい、という方もおられますが、漢字表記というものは、宛字の類を除けば、本来その語の意味を表すものですから、ズワイガニの名のいわれが解らなければ、それもできません。

こういうことで、歴史的仮名遣いを信奉する人たちも、ズワイガニはやむなく「ずわい蟹」と現代仮名遣い式に書くほかないわけです。

なお上記のことは、《南風》を意味する「はえ」についても同様ですが、これについてはすでに拙著『やまとことばワンポイントレッスン』<リヨン社>p.17で触れていますので、そちらをご参照ください。(この項続く)

今朝はいつもの給餌場に煮干しを持参したところ、すでにどなたかがプレゼントしたキャットフードが置かれてありました。しかし、やはり煮干しは魅力的と見えて、そっちの食事を中断して駆け寄ってきました。

なにはともあれ、この雨の多い季節に、にゃんこたちの支援者が他にもおられることを発見したのは心強いことでした。
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*冒頭の画像はhttp://www.net.systemk.co.jp/~kawanina/kani/zuwai/zuwai.htmlより引用。
*撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-07-08 06:18 | 言語・文化雑考


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