2007年 07月 14日
肝心カナメ(1)
f0073935_64831.jpg 与一、鏑(かぶら)を取ってつがひ、よっぴいて、ひゃうど放つ。
 (中略)浦響くほど長鳴りして、あやまたず扇のかなめぎは
 一寸ばかりを射て、ひいふっとぞ射切ったる。

                        (平家物語・巻十一)

『平家物語』の中でもよく知られた、那須与一が平家の船に掲げられた扇の的を見事に射抜く場面。「鏑(かぶら)」というのは、放たれた時に高い音が出るように、小さな穴のあいた空洞のある丸い矢尻を付けた矢のことで、その形が野菜のカブラの根に似ているところから、そのように呼ばれます。



ここに出る「かなめ」は、①《扇の骨が集まる末端にはめ込まれた楔(くさび)状のもの》の名前ですね。

これが、扇の骨がばらばらにならないように束ねるはたらきをするところから、後に②《物事の全体をまとめる大事な点》を指すようになり、その《要点》の意味を表す「要」字が表記漢字に用いられるようになったわけです。

ところで、この漢字は初めから上記①の意味を表すのに用いられていたものではありません。平安・鎌倉期ごろに編まれた漢字辞書各種の「要」の項を通覧しても、カナメという読みは見あたりません。「要」という漢字をカナメと読むようになったのは、カナメに上記②の意味が生まれた後のことと見るべきです。

また、この語の形も、はじめからカナメだったわけではありません。
古い文献には、これがカノメの形で用いられたことを示す例がいくつもあります。

では、カナメがカノメから変化してできたものとするならば、そのカノメとはいったいどういう意味を表す言葉だったのでしょうか。

《蚊の目》 ? 《鹿(か)の目》 ? それとも・・・・。  (この項続く)

昨日は昼前に仕事の区切りが付いたので、雨催いの空模様でしたが、思い切って淺草に出かけて街歩きを楽しんだ後、いつも立ち寄る銭湯で汗を流し、すっかり好い心地になって帰って来ました。とにかく帰宅するまで雨に降られずに済んだのはもっけの幸いでした。
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 *冒頭の画像は"東京扇子店"のページより転載。
  *撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-07-14 06:02 | 言語・文化雑考


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