2007年 07月 19日
肝心カナメ(3)
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前回は《扇のかなめ》の古い語形と見なされるカノメが、漢字で「鹿目」と書かれた例を取り上げました。



これだけを見ると、カナメの語源は《鹿の目》だということになりそうですが、必ずしもそうとばかりも言えません。

『平家物語』と同じ題材で源平の戦を描いた『源平盛衰記』(「盛衰記」は「じょうすいき/せいすいき」両様に読まれます)は、14世紀前半ごろの成立かとされる作品で、諸本の系統によって本文に異同がありますが、江戸期の寛永年間に刊行された版本の一種には次のようにあります。

 忠度かなたこなたを立回り(中略)扇をぞ仕(つか)ひ給ひける。蚊の目のきりきりと
 御前へ聞えけり。
 (巻三十二・落行く人々の歌)

ここでは《扇のかなめ》を指すカノメが「蚊の目」と表記されていることが注意されます。

ただし、この本は後世の刊本なので、原典の本文の姿をそのまま伝えているという保証はありません。この表記が後世のものである可能性も否定することはできませんが、その点はさておき、カノメが《蚊の目》とも解されていたことを示す一例と見ることはできます。
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-07-19 07:48 | 言語・文化雑考


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