2007年 07月 25日
肝心カナメ(6)
f0073935_714979.jpg
《扇のかなめ》を指す古語カノメをめぐって、もう少し寄り道をします。



すでに7月17日「肝心カナメ(2)」の記事で取り上げたように、天文十六年(1547)から翌年にかけて成立した『運歩色葉集』(うんぽいろはしゅう)には、見出し字の「鹿目」に「カナメ」の振り仮名が施されています。

これは、本来ならばカノメと読まれるはずの漢字表記に、現代語と同じカナメの読みを当てたものですから、このころにはすでに、この語の形がカノメからカナメに変化していたと見ることができます。

また、この辞書よりも60年ほど後にキリシタンが刊行した『日葡辞書』(1603-04)にも、見出しにカナメの語形を掲げ、その語釈と用例を次のように記述しています。

  Caname. 扇の心棒,あるいは,締めねじ. また,比喩. 問題の事柄の
      基づく基盤となる事.例,Corega canamede gozaru.(これが
      かなめでござる) これが肝要な事であり,物事の基本である.


一方、その古い語形に相当するカノメの方は採録されていません。この辞書では、ある語に別の形がある場合には、例えば「または、カノメとも言う」のような形でそのことに言及するのが常ですが、ここにはそのような注記も見えません。

これらのことから、16世紀後半のころには、すでにその語形がカノメからカナメに転じていたものと推察されます。

今日の最後の画像は、2007年 03月 18日以降の記事「なんでボケなんて名前なんでしょう」で取り上げたボケ、その枝に生った果実です。ボケの漢字表記「木瓜」は、このような実の形から来たものであることがよく解りますね。
f0073935_7142530.jpg
f0073935_7143674.jpg
f0073935_715887.jpg
f0073935_7145530.jpg
f0073935_7151764.jpg

  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
[PR]

by YOSHIO_HAYASHI | 2007-07-25 07:11 | 言語・文化雑考


<< 肝心カナメ(7)      肝心カナメ(5) >>