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2007年 08月 16日
季語あれこれ -昼寝(6)-
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これまで見てきたように、当時の俳諧では「昼寝」は無季として扱われますが、前句との付合に目を向けると、やはり夏の句に付けられる場合が多かったことに気付きます。



昨日取り上げた「風流の」の巻に出る「昼寝」の例も、夏の前句に付けられたものでしたが、これと同じ事例は他にも見ることができます(下線部が季語)。

   老声くるし夏の鶯              翁
 物喰はで昼寝がちなる襟(ものおもい)  桐葉
    (半歌仙「旅人と」)

   干ぬかたびらを待かぬるなり       北枝
 松の風昼寝の夢のかいさめぬ       コ蟾 
   (五十句「ぬれて行や」)

   あを葉ふき切る栴檀の花         去来
 一枚の筵に昼寝おし合て           芭蕉
    (歌仙「牛流す」)

しかし「昼寝」句は、つねに夏の句に付くとは限りません。

  盆じまひ一荷で直(ね)ぎる鮨の魚    惟然
    昼寝の癖をなほしかねけり       芭蕉
    (歌仙「猿蓑に」)

    明けて寝御座をかけ渡す       揚水
  昼夢の飯たく程に夕ぐるる         其角 
   (百韻「世に有て」)

こちらは前句に秋の季語が用いられています。なお最後の例は、「昼寝」とは表現していませんが、これは前句に「寝御座(茣蓙)」があるからで、その「寝」字との「同字差合(さしあい)」を避けるために、やむなく「昼夢(ひるゆめ)」という異例の和語を用いたものと解されます。

最後は春の「昼寝」の例。

  草刈れどには鎌をさえぬ也       一夢
   昼ね仕(し)に行くの山寺       半残
    (五十韻「とりどりの」)

ここでは前句の「花」を受けて、「昼寝」が季語の「春」とともに用いられています。

さすがに冬の前句に付けられた例は見つかりませんが、ともあれ、これまで見てきたように、蕉門俳諧では「昼寝」の季を限定せずに用いたことは明らかです。 (この項終り)
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今朝の被写体は、久しぶりに見かけた器量好しの白絵さんです。

*撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)

by YOSHIO_HAYASHI | 2007-08-16 06:15 | 言語・文化雑考


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