2007年 11月 16日
「びんぼすっぽ」という言葉 (4)
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昨日の記事に引用した抄物の用例では、《米などの容器》を指す「すつ」が「かわく」という表現が見られました。



すでにこの項の(2)に引用した『玉塵抄』にも「ビンボウ スツホウ カワイテ」の例があり、「かわく」が用いられているところに共通点が認められます。

さらに『日国』「びんぼうすっぽ」の項にも、『当座籠抜(とうざかごぬけ)』(1678年)という俳諧撰集に収める次の例が引かれています。

 松島や緒じめの海士の巾着は     鬼貫
  貧乏すつほかはく間もなし       宗旦


宗旦の付句は、前句の「海士(あま)の巾着(きんちゃく)」を受けて、それが潮に濡れて乾く間がないということと「貧乏すっぽかわく」を掛けたもので、これが当時の慣用句であったことが知られます。

この「びんぼうすっぽ かわく」という言い方は、昨日の記事に引用した抄物に出て来たような「すつ かわく」、その「すつ」の語源が次第に忘却され、やがてこれと同義にあたる「びんぼう」を重ねて「びんぼう すつかわく」のように用いられている間に、その「すつ」が「すっからかん」「すっぽかし」などに見られる強調の「すっ」と同一視されて、「びんぼう」に調子を合わせた「すっぽう」の形が作られ、その「びんぼうすっぽう」が短縮されて「びんぼうすっぽ」「びんぼすっぽ」という形を生むに至ったものであろうと私は考えます。今後さらにこのことを裏付けるような例を探し当てたいと願っています。
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 *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-11-16 07:52 | 言語・文化雑考


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