2007年 11月 22日
鼻を「かむ」(1)
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これも数日前のこと、大学院の授業が始まる前の雑談で、「鼻をかむ」の「かむ」とはどういう素性の言葉なのかということが話題になりました。日常あまり注意を向けることのない動詞ですが、そう聞かれると確かに妙なところのある言葉です。



そこでまず、いつものように『日国』「かむ」の項を参照してみました。

そこの用例の最初に引かれているのは、934年ごろに成立した漢字辞書の『和名類聚抄』十巻本の「洟」の項に載る記事です。その原文を書き下し文にして次に引用します。

 洟 <中略> 文字集畧ニ云フ、■。 <中略> 俗ニ云フ波奈加无。 手ヲ以テ鼻洟ヲ去ル也。      (巻二・形体部鼻口類)

 上記の■は、JIS第二水準にも含まれていない、手偏に「弟」を書く漢字で、これが『文字集畧』という文献にあることと、万葉仮名で「はなかむ」という語形を掲げ、この漢字の意味が俗に用いるこの言葉に相当するものであることが示されています。この記事により、平安時代にはすでに「はな(を)かむ」という言い方のあったことが知られます。

また、その字義を「手ヲ以テ鼻洟ヲ去ル」と記している点も注意されます。当時は指先で鼻をつまむようにして鼻汁を出す、いわゆる「手鼻をかむ」やりかたを用いていたわけですね。紙が貴重な時代ですから、まあ当然のことではありますが・・・。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2007-11-22 08:04 | 言語・文化雑考


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