2008年 04月 13日
花の名前 -ボタン(2)-
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日曜日だというのに、今朝はあいにくの雨。それでもあのボタンがどれほどふくらんだかを見たさに、傘をさしてその写真を撮ってきました。昨日よりもやや花片の開いていることが分かりますね。



ボタンという名前は、日本固有の「やまとことば(和語)」ではなく、「牡丹」という漢字熟語の音読みから生まれた語です。本来、古いやまとことばには、ボタンのように語頭が濁音で始まることばはありません。

この花は中国から伝えられたものですが、その呼び名もまた、そのころの中国語を外来語として受け入れたもので、いわゆる「漢語」と呼ばれる種類に属することばにあたります。

この「牡丹」という漢語は、それが日本語として定着したころには、どのように発音されていたのでしょうか。

12世紀半ば以降、1144年から1181年のころにかけて編集・増補された『色葉字類抄(いろはじるいしょう)』という古い辞書があります。漢字表記に片仮名で読みを施し、その読みの頭の音を基準に見出し字をイロハ順に配列し、さらにそれぞれの内部を語の意味に従って類別したものです。

f0073935_824152.jpgこの辞書の「ホ」の部「植物」の項には、左の画像に見るように、この花の名を表す漢字とその読み方が示されています(前田本写真複製版による)。

 牡丹  紅房 ホタン ホウタン俗

見出し字の「牡丹」右下に記された「紅房」の文字は、簡略な注記にあたるもので、「牡丹」が《紅の花房》を持つ花であることを表しています。

なおこの辞書には、読みを示す片仮名に濁点が施されていないことが多いため、ここに見える「ホタン」「ホウタン」の清濁が不明ですが、これも画像に見るように、見出し字「牡丹」の「牡」字右肩に濁点が施されているところから、その音読みに相当するこれら二語の頭の「ホ」もまた濁音であったと考えることができます。

なお、「ホ」を表す片仮名字体は現在のものと異なりますが、これは現行の「ホ」と同じく、字母の「保」の旁(つくり)「呆」をさらに簡略化して作られた異体字にあたるものです。

以上のことから、12世紀後半のころ、「牡丹」にはすでにボタンとボウタンの二つの語形のあったことが知られます。 (この項続く)

*撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-04-13 07:10 | 言語・文化雑考


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