2008年 04月 16日
花の名前 -ボタン(4)-
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今朝いつもの定点観察地に行ってみると、きのう散歩を休んだそのわずかな隙に、ボタンはそこかしこに花を開かせていました。お見事というほかはありません。



一昨日の記事で、12世紀後半のころに成立した『色葉字類抄』のリ部・植物「龍膽」の項に、リンドウの古名にあたるリウタムとリウタウが並記され、後者の語形を「」としていることに触れました。

f0073935_5383028.jpg同じことはこの辞書のエ部・植物の項にも見ることができます。

  龍膽 リウタウ俗 エミクサ 又 ニカナ

ここでも、リウタウには「」の注記が施されています。

なおこの項には、それとは別に注意されることがらが二つあります。

第一は、左の画像に見るように、「膽」字の左肩に朱筆で濁点が施されていることです。

これは「膽」の字音タウが濁音であることを示すものですから、リウタウは実際にはリウダウと発音されたことになります。したがってもう一つの呼び名も、リウダムと濁音であったと考えてさしつかえありません。

第二は、この花にはエミクサおよびニガナという和名もあったということです。

後のニカナの方は、これも先に触れたように、この植物の根がきわめて苦いことから名付けられたものと考えれば、ニガナ《苦菜》と濁音に読むことができます。花より団子ならぬ、花より薬用を重んじた命名です。

もう一つのミクサは、《笑み草》の意にあたるもののようにも思われますが、(ア行)と(ワ行)に発音の区別のあった時代には、、「笑む」の頭音はではなくであり、現にこの辞書にも、ヱ部・人事の項に収める「[口+笑]字」の見出しの下にムの読み仮名が見えますから、この語源解には疑問が残ります。ちなみに、『日本国語大辞典』の「えみぐさ【笑草】」の語義解説第4項には、上記『色葉字類抄』の記事を典拠として掲げ、「りんどう(竜胆)の異名」とありますが、さてどうでしょうか。

それはともあれ、この辞書が編集された当時、「龍膽」の漢語名には、リウダムとリウダウの二つがあり、リウダムが標準の形で、リウダウは世間一般に用いられる語形であったことになります。

さらに、これらの語末音に注意を向ければ、現代のリンドウは、前者のリウダではなく、「」の形にあたる後者のリウダから転じて、リウダウ→リンダウ→リンドウのように変化したと考えるのがよさそうに思われます。

リンドウの咲く道はもう少し続きます。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-04-16 05:38 | 言語・文化雑考


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