2008年 04月 18日
花の名前 -ボタン(6)-
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今日も雨の朝。その雨ニモ負ケズ、カメラを濡らさないように気を付けながら、例の場所にボタンを撮りに出てきました。いささか偏執気味だということは自らも認めています。これまでの個体にはすでに凋落の兆しが見えて来たので、本日は隣の若いのに乗り換えました(笑)



一枚だけでは寂しいので、二枚目以下には、おまけとして浅草拾遺編を添えました。

昨日の記事に引用した和名抄には「龍膽」の和名が記されているだけで、この漢字の音読みについては何も触れるところがありません。ほんとは、編者の源順がこの花の呼び名として、リウダウ・リウダムのどちらの形を用いたのかについて知りたいのですが、その目論見は、この辞書からは叶えられません。

ところが幸いなことに、そのことを教えてくれる別の資料があります。

歌人としても知られるこの人物の詠歌を集めた『源順集』(983年ごろに成立)の中に、「あめつちの歌 四十八首」と題する作品が収められています。

その当時、「いろは歌」よりも古く、これと同じ方式によって、すべての仮名を網羅する形で作られた、「あめつち」と呼ばれる48文字から成る唱え詞がありました*。源順のこの作品は、これをもとにその順序に従って、48の仮名それぞれを歌の上下に据えて詠むという趣向をこらしたもので、言語遊戯の性格も備えています。 *(注) 拙著『俳人のためのやまとことばの散歩道』(リヨン社)p.33参照。

そのうちの、「り」文字を上下に置いた次の歌の中に、問題の「龍膽」が登場します。

 りうたうも名のみなりけり秋の野の千種(ちくさ)の花の香には劣れり

この歌は、《リンドウは「龍膽」といういかめしい名前を持っているが実は見かけ倒しで、その香りは秋の野に咲くさまざまの花には劣っているよ》というほどの意味ですが、ここにリウダウの語形を用いている点が注意されます。

すでに4月16日の記事で示したように、12世紀後半のころに編まれた字類抄には、リウダムとは別にリウダウの形を掲げて、世間一般に用いられる語形であることを示す「俗」の注記を施していましたが、それよりも300年ほど前の時代には、その語形がこのようなれっきとした和歌の中に用いられていたことを、この作品は我々に教えてくれます。

リンドウの脇道はまだ続きます。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-04-18 07:24 | 言語・文化雑考


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