2008年 06月 10日
花の名前 -ビヨウヤナギ(3)-
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この花の名前は、「ビヨウヤナギ(2)」の記事で紹介した、『毛吹草』(1638)よりさらに古い時期の文献の中にも出て来ます。



それは、キリシタン宣教師たちが長崎で出版した、日本語・ポルトガル語の対訳辞書『日葡辞書』の「補遺篇」に載るもの。この文献は「本編」に漏れた語彙を補うために、その刊行の翌年、1604年に編まれました。

そこに次のようにあります。

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 ビヤウ. 花の咲く柳の一種. (訳文は『邦訳日葡辞書』<岩波書店>による)

上記の見出しにはビヤウとだけありますが、語義解説に「柳の一種」とあるところから見て、これが問題のビヨウヤナギを指すものであることは疑いありません。

この記事は、語義解説としてはまことに簡素なものですが、これまでのところでは、この花の名が文献に姿を見せる、もっとも古い年代資料としての価値があります。

この植物は中国原産で、日本には宝永5年(1708)に渡来した*とされています。しかし、『日葡辞書』の記事は、これより100年以上も前にすでにその名が知られていたことを示しています。
  *松田修『花の文化史』<東書選書>238ページによる。
   ただし、この年代が何にもとづくものかは示されていない。

これによれば、ビヨウヤナギが日本に渡来した時期は、もっと早かったと考えるのがよいでしょう。『日葡辞書』よりも30年後に出された『毛吹草』では、これを(陰暦)五月の季語として挙げています。そのことからも、この植物が当時すでに日本に植生していたことは明らかです。
(この項続く)

今朝は授業の下準備を済ませてから、いつもの散歩コースと外れた場所をサイクリングしてきました。JR中央線沿いの遊歩道には、外来種の植物が植えられています。

2・3枚目はそれぞれ、オーストラリア原産のカリステモン(ブラシの木)とスノーインサマー。昨夜の雨に濡れた花の紅白の彩りの対比が鮮やかでした。後者の命名法には、韓国映画「8月のクリスマス」を思わせる趣がありますね。
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 *撮影機材:RICOH GR-DIGITAL 28mm f2.4
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-06-10 06:01 | 言語・文化雑考


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