2008年 06月 12日
花の名前 -ビヨウヤナギ(5)-
ビヨウヤナギに、本来の「未央柳」ではなくて「美容柳」の漢字が当てられるようになったのは、いつ頃からのことでしょうか。

その比較的早い例は、江戸時代、大阪の医師寺島良安が30年を越える歳月をかけて編んだ、『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』に見ることができます。
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           (大空社「和漢三才図会」CD-ROM版からのプリントアウトによる)



この著作は、収録項目を天・地・人の3部105部門に分類し、それぞれに挿し絵と漢文による短い解説を添えた図解百科事典ともいうべきもので、正徳二年(1712)の年記を持つ序文があります。

上に示す画像は、その「喬木」の部に収められた「びやうやなぎ」の記事の部分で、ここに「美容柳」の漢字表記が示されています。なお仮名見出しの下に「正字未詳」とあるのは、この漢字表記が本来のものかどうかが不明であることを記したものです。

ここに添えられた図を見ると、花と葉の形はともかくとして、幹の形はどうもいただけませんね。ひょっとしたらこれは想像によったのではないかと疑いたくもなります。

しかし解説には次のようなくだりがあります。

 六月、黄花ヲ開ク。単葉ノ棣棠(やまぶき)ノ花ノ如クシテ、甚(はなは)ダ美。子ヲ結バズ。
 蓋(けだ)シ、此レ柳ノ種類ニ非(あら)ズ。最モ喬木ニ非ズシテ葉畧(ほぼ)似タルヲ以テ
 柳ノ名ヲ得タルノミ。


ここに、《この植物は六月に一重の山吹に似た黄色の美しい花を開く》とありますから、著者が実物を知っていたことは間違いありません。

なお、この著作は、中国明代に王圻(おうき)の編んだ『三才図会』にならって編まれたもので、項目によってはその図を借用することもありますから、その可能性についても考えておかねばなりません。

しかし、中国ではこの花を「美容柳」と呼んだ例はなく、これは日本で付けられた名称と見るべきですから、そのことは問題にならないでしょう。だいいち、著者がこの項目を書くのにこの本を参考にしたのならば、上記のように「正字未詳」としたりはしなかったはずです。

またこの解説の中に《この植物が柳のような丈の高い木でないのに、その名があるのは、その葉が柳に似ているからだ》とあるのは、「美容柳」という名称に対する考証ですから、この項目については中国の『三才図会』の影響は考えに入れる必要はないわけです。

上のビヨウヤナギの図は、その名を意識して“柳”らしくデフォルメされて描かれたものと思われます。

ともあれ、「未央柳」を「美容柳」と書いた例は、すでに1700年代初めのころに見られることが確認されました。 (この項続く)

今朝はひどい雨降りのために、朝の散歩は中止。
昼頃から雨が上がるという予報なので、それまでに仕事を済ませて買い物に出るつもりです。
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-06-12 07:49 | 言語・文化雑考


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