2008年 06月 26日
花の名前 -ビヨウヤナギ(7)-
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未央柳」というのは、唐の詩人白楽天の七言古詩「長恨歌」の一節に出る詞です。



漢皇(実際は唐の玄宗皇帝)が楊貴妃を寵愛して政(まつりごと)を忘れたことから、安禄山が乱を起こし、その平定に向かう兵をなだめるために、やむなく楊貴妃の命を絶つことを許す。ようやく反乱が収まって都に戻った皇帝が、ありし日の楊貴妃をしのんで悲しみに沈む場面が次のように詠まれています(拙訳を添えます)。

  歸來池苑皆依舊 太液芙蓉未央柳
  芙蓉如面柳如眉 對此如何不涙垂


   都に帰り来て見れば、池も園もすべて元のまま
   太液池の芙蓉も未央宮の柳も変わることはなく
   芙蓉はさながら妃の顔、柳はあたかも眉のよう
   これを見て、どうして涙を流さずにいられようか


「未央柳」とは、玄宗皇帝が楊貴妃と過ごした「未央宮」、そこに植えられた柳のことで、楊貴妃の美しい眉をその葉の形にひきあてたものであることが知られます。

ビヨウヤナギの名は、このような漢詩を典拠として、その花の美しさを楊貴妃になぞらえたもの。その命名者が誰だったのかまでは解りませんが、このような中国文芸に親しんだ文人であったことは間違いないでしょう。 

なお、この花は植木店の店頭などで「美女柳」と書かれているのをよく見かけます。ビヨウヤナギビジョ(ウ)ヤナギに形を変えたものでしょうが、「楊貴妃=美女」と置き換えれば、それなりの由緒に支えられた別名になってはいるわけですね。 (この項続く)

朝からあいにくの雨で遠くまで行けず、思うような素材が得られませんでした。今朝も近場で撮った時節の花、アジサイでご勘弁のほどを。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-06-26 06:54 | 言語・文化雑考


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