2008年 06月 28日
花の名前 -ビヨウヤナギ(8)-
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 咲き出でぬびえうの柳たよ/\と     蛇足

角川俳句大歳時記 夏』は「未央柳」の項の筆頭に、『新類題発句集』に収めるこの句を引いています。



この発句集は、「蝶夢」という俳人が寛政五(1793)年に京都で出版したもので、当時の発句を集めて月毎に配置し、それぞれを季題別に分類した季寄せ形式の俳諧書です。

上掲句に「びやう(未央)」が「びえう」と記されているのは、さきの「ビヨウヤナギ(6)」のところで触れたように、この時期にはすでに「やう」の仮名表記が「えう」「よう」と混乱していたことによるものです。

ところで、この句に用いられている「たよたよと」というのは、《力がぬけて見るからに頼りない様子》の意を表す中世日本語です。

昨日の記事に引用した「長恨歌」の前の箇所に、楊貴妃が華清宮の温泉に入浴し、湯疲れした玉体を侍女に助け起こされる場面が描かれています。

 温泉水滑洗凝脂温泉水滑ラカニシテ凝脂ヲ洗フ
 侍兒扶起嬌無力侍児扶ケ起スニ嬌トシテ力無シ

室町後期、天正五(1577)年七月五日書写の年記がある『長恨歌和解』(内閣文庫蔵)という「長恨歌」の注釈書は、このくだりに次のような解釈を施しています(濁点・読み仮名・かぎ括弧は筆者による)。

  貴妃ガ久(ひさし)ク湯ニ入レバ、クタビレテ、ソバニ仕(つか)ハルヽ女房達ニヨリカヽツテ、
  タヨ/\トシタ体(てい)、誠ニ心モ詞モ不及(およばず)ウツクシキヲ「嬌無力」ト云也


「たよたよと」という語には、楊貴妃の脱力した優艶な姿態を思い起こさせるものがあったのでしょう。はじめに引いた「蛇足」の句が「びえうの柳」を「たよたよと」と表現したのは、このことを示しています。それはまた、当時の俳人たちがビヨウヤナギに楊貴妃の面影を浮かべていたということでもあります。 (この項終り)

今朝は城尾ファミリーが三匹姿を見せました。最後の画像が城尾さんです。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-06-28 06:50 | 言語・文化雑考


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