2008年 07月 23日
花の名前 -アジサイ(5)-
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アジサイが登場する歌は、万葉集巻四の中にもう一首あります。

 言問はぬ木すら あぢさゐ諸弟らが 練の村戸に 欺(あざむ)かえけり



こちらは、大伴家持坂上大嬢(さかのうへの おほいらつめ)に贈った五首の歌の一つ。ここに出る「諸(もろと)」には「諸(もろち)」の異文があり、「練(ねり)の村戸(むらと)」にも諸説があって解釈の定まらない歌ですが、相手の心変わりを、色の変わりやすいアジサイにたとえたと解する点は一致しています。

この歌の原文にも、先に見た橘諸兄の歌と同じく、アジサイに「味狭藍」の表記が用いられています。これは、この漢字表記が当時通用のものであったことを示すものです。

そうするとこの表記については、単なる同訓字の借用というだけではなく、この花の名に対する当時の語源意識が反映している可能性も視野に置く必要がありそうです。

ちなみに、『日本国語大事典』(第二版)「あじさい」の「語誌」の項には、次のような記述があります。

 「あじ(あぢ)」は「あつ」で集まること、「さい」は真藍(さあい)の約で、青い花が
 かたまって咲く様子から名付けられたと思われる。


これはすでに『大言海』に示されている語源解で、上記はこれに従ったもののようですが、はたして「あぢ」に《集まる》の意を求めることが可能か、この点には疑問が残ります。しかし「さゐ」を「真藍(さあゐ)」の縮約形と見るのは、万葉集の「狭藍」の表記にその支えを求めるもので、参考にする価値はあるように思われます。 (この項続く)
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-07-23 05:31 | 言語・文化雑考


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