2008年 07月 27日
花の名前 -アジサイ(9)-
「紫陽花」を見出しに掲げてこれに「阿豆佐為(あづさゐ)」の和名を示しているのは、7月25日の記事で触れたように、『和名類聚抄』の二十巻本系統に見られる特徴で、十巻本系統の本にはこの項目がありません。

このことは、どちらの系統の本が原形に近いものであるかという問題とも関わってきます。すなわち、「紫陽花」の記事は初めからこの辞書にあったのか、それとも後に増補されたものなのかという問題がそこにあるわけです。



さらにそのことは、『白氏文集』の「紫陽花」を日本のアジサイに比定したのは著者の源順だったのかどうかという問題ともつながってきます。

f0073935_615495.jpgこの点については、残念ながら歴とした裏付けがないために、どちらと決めることはできません。ただし、『和名類聚抄』二十巻本に見えるこの記事がかなり早い時期から他の辞書に影響を与えていたことは明らかです。

1241年書写の奥書を持つ漢字字書、観智院本『類聚名義抄』に見える左の画像の記事は、そのことを示す一例にあたります。

この記事は、「女郎花(ヲミナヘシ)」以下に続く「花」字を語末に持つ見出し語の一つで、棒線は「花」字を省略したもの。全体で「紫陽花」を示しています。

ここでは、『和名類聚抄』の「阿豆佐為」という音仮名が片仮名に替わり、そこに「声点(しょうてん)」と呼ばれる朱点が施されて、「アヅサヰ」の読みと、[低高高高]のアクセントを示す形式に改変されています。

しかし、この記事が「紫陽花」を載せる二十巻本系の本文にもとづくものであることは、疑う余地がありません。 (この項続く)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-07-27 06:15 | 言語・文化雑考


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