2008年 09月 18日
桂(続)
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本日のも、札幌の佐藤氏提供による桂の巨樹の近接画像。撮影時は数年前の春、撮影地は市内の円山公園とのことです。



ところで今日の話題は「桂の花」。

一般に桂の花と言えば、この樹木が「春、葉に先立って紅色を帯びた細花を房状につける」(日本国語大辞典による)、その花のことですが、これとは別のものを指すこともあります。

その一つは、モクセイの花。大きな歳時記では晩秋の季語としての「桂の花」を、「木犀」の項の傍題に収めています。

寛永十五年(1638)の自序を持つ俳諧書『毛吹草』(松江重頼編)の巻二、「連歌四季之詞」の「暮秋(=九月)」の項に、この季の花の名の一つとして「桂の花」が収められてあり、これは木犀を指すものと思われます。

ところが、その前の「中秋(=八月)」の項には、「月のさやか・月の都・星月夜」と並んで「月の桂の花」とあり、連歌俳諧などでは、木犀とは別に、月(の光)を指す詞としても用いられたことを示しています。

その一例。「芭蕉七部集」の第一集「冬の日」に収める歌仙「炭売の」の巻に、次の付合が見えます。

  なかだちそむる七夕のつま      杜国
 西南に桂のはなのつぼむとき     羽笠
  蘭のあぶらに卜木うつ音       芭蕉
   ※卜木(しめぎ)

ここに引いたのは、名残表四句目から六句目にかけての付合。連歌俳諧の式目では、春秋句は少なくとも三句は続けるきまりになっているので、ここはそれに従って秋季句を三句続けています。「七夕」「桂のはな」「蘭」がそれぞれ秋の季語にあたります。

ここで注意されるのは、五句目の羽笠句が月の句として扱われていることです。

一般に歌仙の名残表では、十一句目が月の定座(じょうざ)にあたりますが、この一巻では月の座を五句目に引き上げています。天上界の七夕伝説を詠んだ前句を受け、同じ天象の素材によって、西南の方角から立ちのぼる月を「桂のはな」と表すことで月の句としたものです。

この付合が示すように、「桂の花」は、連歌俳諧では月の異名として用いられる詞でした。
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-09-18 07:57 | 言語・文化雑考


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