2008年 09月 24日
花の名前 -ケイトウ(4)-
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ケイトウの和名にあたるカラアヰを使用した例は、『万葉集』に収める四首の和歌にも見ることができます。次に掲げるのはその中の巻七に出るもの。

  秋去者 影毛将為跡 吾蒔之 韓藍之花乎 誰採家牟
 (秋さらば うつしもせむと わが蒔きし 韓藍(からあゐ)の花を 誰かつみけむ)



この歌は、《秋になったらうつし染めにしようと、私が種を蒔いて育てた韓藍の花を、いったい誰が摘んでしまったのだろうか》という意を詠んだものですが、ここで注意されるのは、1)この花について「うつしもせむ」と詠まれていること、2)カラアヰが「韓藍」の漢字で表されていることです。

1)にいう「うつし」とは、この花を布などに強く押し当て、花汁をすり付けて染める方法。当時はケイトウが染色材料としても用いられていたことを示しています。

2)の表記は、カラアヰが《韓の藍》の意を表す名であることを示すもの。ちなみに他の三首には次の漢字が用いられています。

 ①幹藍  ②辛藍  ③鶏冠草

①の「幹」と②の「辛」は、ともにカラの訓を持つ他の字を借りて表したもので、「借訓」と呼ばれる表記法ですが、アヰについては、ともに上記の例と同じ「藍」の字を用いています。③はすでに前回に見たように、『本草和名』にもこれと同じ熟字表記が用いられていました。

ところで、カラアヰのアヰが《藍》の意であることについて、われわれの色彩感覚では紅色にあたるケイトウがこう呼ばれている点に、なにやら釈然としないところが残りますね。 (この項続く)
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-09-24 05:52 | 言語・文化雑考


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