2008年 09月 28日
「おとめ」二題 (1)
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【その1】
先日、郷里のいわき市在住のN・Kさんから届いたメールに、次のようなことがらが記されてありました。



土佐の知り合いの方から届いた葉書に、「『おとめ』は何も御座いません」とあり、こういう言葉をはじめて知りました。内容から考えると、多分《お礼》とか《お返し》の意味だと思います。

私もはじめて聞く言葉だったので、さっそく『日本国語大辞典』を検索してみました。「おとめ」では見つからなかったものの、「とめ」の項には次のようにありました。

贈り物を入れてきた器に入れて返す品物。高知県などでいう。

「おとめ」というのは、この「とめ」に「お」を付けた形だったのですね。

上記の辞典では、吾山(ござん)という俳人が安永四年(1775)に刊行した方言辞典『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』の記事を出典として掲げています。原典の影印版を参照してみると、「巻之四 器用」の部に次のようにありました。句読点・濁点を補ってそれを引用します。

発燭 つけぎ ゆわうぎ ○東国にて つけぎ といふ。関西にて ゆわう と云。越後にて つけだけ と云。土佐にて つけぎ と云。又 つけだき と云。
今按(あんずる)に、関西にて ゆわう といふは、 ゆわうぎ の下略成べし。又、外より重の物にもあれ、何にもあれ、贈り来る器の内へ、 うつり に紙或はつけ木を入て返す事有。

  (中略)
又、東国にて うつり といへる物を、土佐の国などにては、其器に入て返す物の名をば とめ といふ

この記事の前半には、見出しの「発燭」の文字が示すように、着火に用いた「付け木」の方言が示されていますが、後半には話題がそこから転じて、この言葉が別の物を指すことに及んでいます。

ここに「うつり」とあるのは、贈り物を入れてきた重箱などの器に、お礼として入れて返す品のこと。下線部に示されるように、土佐の国ではそれを「とめ」と言ったことが、この記事から知られます。この地方には現在に至るまで、このようなゆかしい言葉が受け継がれていたのですね。 
(この項続く)
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  *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-09-28 06:03 | 言語・文化雑考


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