2008年 10月 03日
「おとめ」二題 (4)
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【その2】
もう一つの「おとめ」もまた、方言にまつわる話です。



私の少年時代、親類の叔母さんが《赤ん坊》の意味で「おとめ」ということばを使ったのを聞いたことがあります。いわきの郷音では、語中尾のカ行やタ行の音が濁音化するので、実際には [オドメ] になりますが。

このことを、小名浜在住のN・Kさんにメールで確かめたところ、やはり聞いたことがあるという話でした。

今から数年前に、娘さんとお孫さんを連れて近くの公園を散歩していた途中で出会った二人の老婦人が、「オドメ見だのは何十年ぶりがね」と話し合っていたということですから、最近でも高年齢層の語彙の中には、これがまだ生きていることが知られます。
 
『日本方言大辞典』(小学館)によれば、このことばは、いわき市の他に、茨城県・栃木県東部・千葉県東葛飾郡などの地域に使用されるということなので、東北南部から関東にかけて分布していることになります。

ところでこの「おとめ」は、《赤ん坊》の性別とは関わりなしに用いますから、共通語の《乙女》とは別のことばです。『日本国語大辞典』(第二版)の見出しでは、この「おとめ」に「弟奴」の漢字表記を当てています。

オトウト《弟》というのは、オトヒト(弟人)から変化したことばとされています。そのオトとは、本来は男女の別なく年下の者を指すことばでした。いわき方言のオトメのオトも、これにあたるものと考えることができます。

オトメのメの方は、一般には「奴」の字を当てる接尾辞ですが、この方言に含まれるメは、「やつメ」「あいつメ」などのように対象を卑しめる用法ではなく、親しみや愛情をこめて用いたものと見るのがよいでしょうね。

対象への親しみや愛情の気持を表すのに、このような蔑称に類することばを用いる例は他にもあるはずです。どなたかそういう例をご存じありませんか。
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 *撮影機材:R-D1+NOCTILUX-M50mm f1.0(2nd generation)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-10-03 08:03 | 言語・文化雑考


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