2008年 10月 10日
「風呂敷」のこと(4)
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『日本国語大辞典』(第二版)「ふろしき【風呂敷】」の用例の中に、徳川家康の遺品分配目録にあたる『駿府御分物御道具帳(すんぷ おわけもの おどうぐちょう)』の元和二年(1616)十一月二十三日の条に出る次の記事が引用されています。

 一、こくら木綿風呂敷 壱



「風呂敷」の名が文献に登場するものとしては、目下のところこれがもっとも古い例のようです。ただし、ここに見える「風呂敷」は、包むためのものではなく、本来の用途である風呂の敷物に用いたものを指すと思われます。

上記の記録には、これと並んで「こくら金入敷物」の名も挙げられていますが、われわれの感覚からすると、こちらならばともかく、「木綿風呂敷」については、なぜこんなつまらないものを載せたのかという気がしますね。

しかしこの時代には、木綿の日本での栽培が始まったばかりで、その織物はまだ高価なものでした。ですから、それを敷物に用いるというのは、「金入り敷物」に劣らず、たいへん贅沢なことであったわけです。これに対して一般の「風呂敷」には、前回『日葡辞書』のヒラヅツミの項の語釈に見たように、麻で織ったものが使用されていたと思われます。

ちなみに、木綿は室町時代に朝鮮との交易により日本にもたらされたもので、古くはモメンではなくモンメンと呼ばれていました。

このモンメンという語形は、一般には「木綿」の日本字音モクメンから出たと考えられていますが、それだと第二拍のクが撥音のンに変わったということになり、その点が不自然です。それよりも「木綿」の朝鮮字音にあたる옥면(モンミョン)を、外来語としてモンメンの形で受け入れたものと見るのがよいと私は考えます。 (この項続く)
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 *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-10-10 07:15 | 言語・文化雑考


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