2008年 10月 12日
「風呂敷」のこと(5)
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話題を再び蕉門俳諧に戻します。



  ちくとした風呂敷さげて戸をたゝき    支考
   こそり/\とそよぐ黍の葉        惟然


元禄七年(1694)閏五月、去来の住む嵯峨の落柿舎を訪れた芭蕉は、そこで入門を許された初対面の浪化上人を交えて、三人一句ずつの付合をします。上に引用したのは、この三吟三物(みつもの)に、後日芭蕉以下七名の連衆が四句目以下を続けて、歌仙に仕立て変えた「葉がくれを」の巻に出る付合です。

支考句に出る「ちくとした(=ちょっとした)風呂敷」が物を包むのに用いるものであることは句意から明らかですね。この句は、「風呂敷」が現代と同じ意味で使用されるようになったことを示す一つの例にあたります。

一方、すでにこの項の(2)で見たように、これより5年前に詠まれた芭蕉句には、その古称にあたる「平包」が用いられていました。このことから、物を包む布の名前が「平包」から「風呂敷」に変わった時期は、おおよそ元禄のころであったことが知られます。

本来は風呂の敷物として用いられた布が、やがて物を包む役割を果たすようになった、そのことがこの呼び名の変化の背後にあるわけですが、それは江戸期に入ってから銭湯が広まったことと関連があるのは疑いありません。生活や習慣の変化が呼び名の変化をもたらすことは、いつの世にも起こり得る言語現象ですね。 (この項続く)

今日の東京の日の出は5時45分。冒頭の画像は、散歩に出る時に自宅の近くで目にした光景。もろに逆光のところを、絞りと露出補正でなんとかカバーしました。
今朝は風の寒さが身に沁みました。冬の到来ももうすぐですね。
本日は四酔会の連句興行があります。どんな付合が生まれるのか、楽しみです。
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  *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-10-12 08:07 | 言語・文化雑考


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