2008年 10月 24日
「ながめつすがめつ」 (3)
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ためつ・すがめつ」にその疑似表現形が多く作り出されたのは、この定型句に用いられる「たむ」と「すがむ」の二つの動詞が、単独では用いられることの少ない、限りなく死語に近い状態に置かれている語であるところに、その大きな原因があるのでしょう。



ある言葉の語源や原義が不明になると、使用者がその言葉を自分なりに合理化して語形を変えたり、新しい語を生み出したりする現象がよく起こります。

かつて全国の少年たちを虜(とりこ)にしたテレビアニメ「巨人の星」、そのオープニング画面に流れる主題歌は「思い込んだら 試練の道を」のフレーズで始まるものでした。

たまたまその歌詞が、野球選手たちがグランドを整備するためのローラーを引く画面と重なって流れてくるので、その「思い込んだら」を《重いコンダラ》と受けとめ、選手たちが重たげに引いているあのものは「コンダラ」と言うのだなと、自分はそう思い込んでいた、そういう後日談が大人になったそれらの少年たちによって、そこかしこで語られました。

ついでに言えば、これに続く「試練の道」だって、子どもにとっては耳慣れない漢語的表現ですよね。ひょっとしたら、これを《「シレン」という名前の道》と考えて、あのコンダラでシレン道路を平らにしているのだな、などと考えた子もいたかもしれませんね(笑)

それはともあれ、このことがきっかけになって、この種の思い違いや聞き違いを指す「コンダラ」という新語まで生まれたのは、まだ記憶に新しいことです。

さて、標題の「ながめつすがめつ」をネットで検索してみると、これはすでにかなり定着した表現であることが見て取れます。(以下、用例のみを掲げ、出典はあえて記しません)

 ・僕はここしばらくは港に停泊し海と空と太陽をながめつすがめつしたいと
  思います。
 ・映画なら早送り、飛ばし見してながめつすがめつ、できる。 音楽に、そういう
  覗き的行為は許されない。
 ・ながめつすがめつ、と見こう見、しながらゆっくりプレス板を降ろして、これで完璧!


これにはさらに、次のような変異形も加わります。

 ・江戸変体仮名の本などをながめすがめつして歌の解読を試みたのですが、
  どう読むのかよく分かりませんでした。
 ・父は焼酎をテーブルの上に置いて、それをながめすがめしつつ、喉の奥を
  コホンと鳴らしたりしていた


上の「ながめつすがめつ」第三例には、「と見こう見」の類義表現も併用されていますが、このような「ながめつすがめつ」とその亜種は、比較的若い世代で書記言語の使用に慣れた階層が、ややよそ行きの、悪く言えば少々背伸びをした表現をする時などに用いるもののように思われます。

ところで、実はこのネット検索を行っている間に、これとは別の、さらにその上を行く驚天動地(笑)のコンダラ例を発見してしまいました。 (この項続く)

  *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-10-24 05:47 | 言語・文化雑考


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