2008年 11月 07日
ヒシャク(柄杓) (2)
昨日の記事に対する寿児郎クンのコメントにあったように、ヒシャクにはシャという拗音が含まれているので、そこにこのことばが漢語めかしく聞こえるふしがあります。



拗音は、古いやまとことばの音の単位(音韻)には本来存在しなかったもので、中国から外国語として伝えられた言葉(漢語)が、後に日本語に取り入れられたことから、日本語の新しい音の単位として加わったものです。

仮に拗音が古くから日本語の中に存在していたとしたら、それを表す一字の仮名文字が作られてもよかったはずです。しかし拗音に限っては、キャとかチョのように、仮名二文字を使って表されます(なお、古くはキヤ・チヨとヤ行の仮名も大きく書かれました)。

つまりこの表記法は、日本語の中に新しく定着した拗音を表すために、二文字の仮名を組み合わせる形で工夫された、いわば苦肉の策とも言うべき方法であったわけです。

ところが、サ(ザ)行に限っては、漢語に含まれるシャ(ジャ)行の音を一字の仮名で表した例が少なからず見られます。

たとえば、シュクセと読まれるはずの「宿世」は、平安期の仮名文学などでは「くせ」と書かれます。シャウゾク(装束)がうぞく」、ジュシャ(従者)が「」(いずれも原文には濁点なし)の形で表されるのも、これと類を同じくするものです。 (この項続く)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-11-07 07:54 | 言語・文化雑考


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