2008年 11月 08日
ヒシャク(柄杓) (3)
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平安期の仮名文学に見える「ずさ(従者)」や「さうぞく(装束)」などのような表記例について、当時はそれらの語がズサ・サウゾクと発音されていた、と考えてはいけません。



「ずさ」をズサと読むのは、われわれが現代の発音に従ってそう読んでいるだけのことで、当時もそのように読まれたという保証はどこにもありません。

仮名文字というものは、過去の時代の発音までは伝えてくれません。仮名は容器に張られたレッテルのようなものであり、その中身(発音)は時代によって変わることがあるからです。

「ずさ」の「ず」と「さ」が表す音は、現代ではそれぞれ [zu] [sa] ですが、仮に平安期のザ行・サ行音が [ju] [sya] に近いものであったとすれば、「従者」は仮名では「ずさ」と書かれても、実際は[ju sya]と発音されたと考えるのが正しい。つまり、ズサなどと発音されることばは、初めから存在しなかった、ということになります。

現代人には、[ju] [sya] の音はともに「拗音」と意識されるので、「じゅしゃ」と4文字で表されます。しかし、この両音が、平安期には普通のザ行・サ行音として受けとめられていたとすれば、その仮名書きは「ずさ」の形をとるはずですね。  (この項続く)

今日の画像は、昨日街歩きに出た折に、乗り換えの神田駅コンコースに店開きをしていた竹細工の店で見かけたヒシャクの写真。これに目が留まったというのも、ブログの縁というものでしょうか。

   *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-11-08 07:32 | 言語・文化雑考


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