2008年 11月 13日
ヒサゴとヒシャクや、前に挙げたクサメとクシャミのように、同じ意味を表すことばに直音と拗音の両形が見られる例は、他にもあります。 シャレカウベ(髑髏)には、「されかうべ」の仮名書きが用いられますが、一般には拗音形が用いられたようです。次の画像に見えるのは、前と同じ『邦訳日葡辞書』に出る例です。 この語は《風雨にさらされる》意を表す動詞「さる(曝)」の名詞形「され」と、《頭部》の意の「かうべ」が結び付いたものですから、シャレカウベが本来の拗音形にあたります。しかし上の記事は、シャリカウベの方が当時通用した形であったことを示しています。 この語の前半部シャレがシャリになったのは、本来は《釈迦の骨》の意を表す漢語のシャリ(舎利)が、当時は意味領域を広げて《骸骨》の意味に用いられていた* ところから、この語への類推がはたらいた結果によるものと考えることができます。 ところで、左の画像は、江戸期の享保二年(1717)に、槇島昭武(まきじま あきたけ)が出版した意義分類体辞書『書言字考節用集』の「肢体門」に納める「天靈蓋」の項の写真です。ここには、見出し字の和訓として、その左右に、直音形のサレカウベと、拗音形のシャレカウベの両語形が示されています。 このような拗直両形の併存例としては、現代語ではサケ(鮭)とシャケの例が思い当たりますが、同様の例はさらに古い時期の文献の中にも確認することができます。 (この項続く) *(注) 同じ『日葡辞書』の Xari.(シャリ) の項に、次のような語義解説が見えます。 肢体の骸骨.多くの場合,ゼンチョ(異教徒)が非常に大切な 聖遺物と考えている,Xaca(釈迦)の骨の意に解せられる.
by YOSHIO_HAYASHI
| 2008-11-13 07:50
| 言語・文化雑考
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