2008年 11月 16日
ヒシャク(柄杓) (9)
発端となったヒシャクの話題に戻ります。



現代に至るまで、この語本来の拗音形が保存されたのは、これが生きた日常語として伝承されたこととは別に、「柄杓」という漢字表記がそれを支えてくれた面のあることも見逃すべきではないでしょう。

この漢字はもとより当て字ですが、字面を見る限りは、いかにもうまうまと当てられていて、「柄」をヒと読ませることへの疑念を起こさせないほどの出来映えに仕上がっています。

この表記がいつごろから用いられるようになったのか、定かではありませんが、およそ室町期のころにまではさかのぼれることが、その当時の古辞書類の記事によって確認されます。

次に示す画像はその一例ですが、これによれば、はじめから「柄杓」に一定していたわけではないことも知られます。

文明本節用集  ② 易林本節用集 ③ 同左f0073935_7282776.jpgf0073935_7313462.jpgf0073935_7302796.jpg
この中、成立時期のもっとも古い①『文明本節用集』(室町中期成立)の「柄」の左側に、《取り柄》の意を表す「トリヱ」の付訓のあることが注意されます。

ヒシャクのヒにこの字が当てられたのは、縦割りヒョウタンの首の部分を握り柄として使っていた時代ではなく、この用具に、取り柄、すなわち長い持ち手が付くようになってから後であったことを、この記事は示していると言えるでしょう。  (この項終わり)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-11-16 06:33 | 言語・文化雑考


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