2008年 11月 24日
「おいさき短い」ということば (2)
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おいさき短い」に代わって最近では「あとさき短い」という表現が台頭している、そのことを嘆いても、それはもはや詮無いこと。なにせ一国の宰相からして怪しげな日本語を平気であやつる時代が現に到来しているのですから。



ただし、ここではそういう「かたこと」に対する"言葉とがめ"をしようというのではありません。実は、こちらが正統だと思われている「おいさき短い」という表現、これにも別の問題があるということを取り上げてみたいのです。

さて、教科書などでもおなじみの、森鴎外の歴史短編小説「最後の一句」の終末近くに次のようなくだりがあります。

 白洲を下がる子供等を見送つて、佐佐は太田と稲垣とに向いて、「生先の恐ろしいもので
 ござりますな」と云つた。


ここに見える「生先」には、歴史的仮名遣いによる「おさき」のルビが振られています。「おひ」は「おふ(生)」の名詞形にあたるものです。

これに対して、「おいさき短い」のほうの歴史的仮名遣い、こちらは動詞の文語形が「おゆ(老)」ですから、現代仮名遣いと同じく「おさき」になります。

つまり、現代語でオイサキと発音される語には、「おひさき」と「おいさき」の二つがあり、両者は本来別語であるというわけなのです。 (この項続く)
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*撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2008-11-24 17:34 | 言語・文化雑考


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