2008年 11月 28日
『時代別国語大辞典 室町時代編』には「おいさき」の項目が立てられていません。これは、この語の用例が室町時代の文献には見あたらないことを意味するものです。 ちなみに、この辞書の「おひさき[生先]」の項に引く用例の中に、『子やす物語』という短編に出る「おいさき人にすぐれたまひける程に」の例が見えます。 しかしこれは、幼い子の将来を期待する意味に用いられた「おひさき」が、この時代の発音に従って「おいさき」と表記されたというだけのことですから、これは「おいさき」の例にはなりません。 「おいさき」ということばが《老い先》の意に用いられるようになるのは、江戸期に始まることのようです。 『日本国語大辞典(第二版)』には、「おいさき【老先・老前】」①の項に、浮世草子『日本永代蔵』(1688)に出る次の例が挙げられています。 「此ぶんにて通るべきや。人間の身はわづらひある物」と、老さきの事あんじける。 この例には「老さき」の表記が見えるので、《老い先》の意に用いられたものであることは明らかです。 (この項続く) 寒い雨が降っているので、今朝も散歩に出られません。本日の画像には、この前の休日に吉祥寺で撮った画像を流用しました。 *撮影機材:R-D1+NOKTON classic40mm f1.4 (S・C)
by YOSHIO_HAYASHI
| 2008-11-28 08:05
| 言語・文化雑考
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