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2010年 03月 24日
シタダミからフゲシへ -ツィッターの話題から- (8)
f0073935_7104954.jpg前回に示したように、二十巻本『和名類聚抄』本文における能登国「鳳至」郡の読みが、元和三年古活字版には「不布志(ふふし)」とあり、このことに不審が残ります。この点について二十巻本の古写本の本文を調べてみました。

ちなみにこの古辞書には、別系統に属する十巻本もありますが、こちらには「国郡部」が収められていないので、参考にすることはできません。なおこの点については、原本にあった「国郡部」が後に省かれたのか、それとも原本成立後に増補されたものかをめぐる諸説があります。私は後者がよいと考えますが、この問題にもここでは深入りしません。

左に掲げるのは、永禄九年(1566)に書写された、名古屋市博物館所蔵『和名類聚抄』の該当箇所の画像です(同博物館1992年発行複製本による)。

これをこの項(2)に掲げた元和三年古活字版の本文と対比させてみると、後人の手の加わっていることが分かります。元和版にはなかった郷里名がそれぞれの郡名の下に加えられている反面、本来は万葉仮名で表記されていた郡名の読みが片仮名による振り仮名形式に改められていますね。

さて、問題の「鳳至」に施された読み仮名は「フケシ」とあります。ここには濁点は施されていませんが、現在のフゲシに相当するものと見てさしつかえないでしょう。

この資料は、「鳳至」の現在の呼び名がすでに16世紀中頃には存在していたことを証拠付けるものです。 (この項続く)
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by YOSHIO_HAYASHI | 2010-03-24 07:15 | 言語・文化雑考